Les Paul


 レス・ポール。もはや説明不要のギブソンのエレクトリックギターだが、
ご存知この楽器を作り出したマエストロの御名であり、93歳で亡くなられ
るまで現役ギタリストであり続けた素晴らしいミュージシャンである。

 本名「Lester William Palfuss」。「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」他に代表
されるレス・ポール&メリー・フォードによる名演の数々は今後もポップス
の一つの金字塔として輝き続けるであろうが、氏が残された偉業は音楽のみ
ならず音を紡ぐ楽器とその音を記録する為の機械の両方を、自らの音楽表現
の為に作り出した事だ。

 現在はポップスやジャズを中心とした多くの音楽を録音する際、ボーカル、
ベース、ギター、ピアノ等々、パート別にトラックを分けて録音するマルチ
トラック録音が主流で、パソコンベースのDAWではこの録音トラックを
無制限に用意できるが、磁気テープを用いた初期の録音機器はこのトラック
を増やす事が至難の技だったにもかかわらず、氏はこの時代に8トラックの
マルチトラック録音機器を作った訳である。磁気テープを使用した録音には、
録音ヘッドと呼ばれる部品が必要だが、この部品をアンペックスという会社
に発注したものの他の回路や筐体のほぼ全てが氏の自作だった訳である。

 さらに、氏のその音楽作りにおいてテープレコーダーの再生速度を倍にし
たりという斬新なアイデアと共に演奏と録音を氏一人で行った事を知った時
はもの凄い衝撃で、「これだ!」と、某局の全国のど自慢で合格の如く頭の
中で鐘が鳴り狂った。何をやるにしても大切な事は、必要な事を極力自分で
どうにかするという姿勢や発想だという事を改めて思い知らされる。

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 因みにマルチトラック録音による最初の作品は、氏による自作機器と演奏
で1950年代に行われているが、マルチトラック録音機器での音楽制作で
商業的に成功したのは1967年、ビートルズの”Sgt. Pepper's Lonely
Hearts Club Band ”という話も聞く。

 また、スタジオ録音では様々の音響効果機器が存在するが、その中で最も
身近なものの一つに「エコー」とか「リバーブ」等と呼ばれる残響感を付加
する機器がある。氏はこの機器についても自ら作ったものがあり、ロスアン
ゼルスのキャピタルスタジオで今も現役で使われている。

 マルチトラック録音機器は、1→2→4→8→16→24とトラック数が
増え、80年代に入りデジタル録音機器が市場導入され、そのトラック数は
48にまで増え、それと並行するように90年代初頭にはテープに記録する
のではなく、コンピューターベースでハードディスクに音声信号を直接記録
するプロ・ツールズが産声をあげ、現在の様々なDAWへと繋がる訳である。

 楽器のレス・ポールはその原型となる自作のギターは1941年頃に作ら
れたようだが、52年に "Gibson LES PAUL model guitars" として正式に
リリースされ、以降半世紀を超えて世界中のギタリストの創作意欲に火を付
け続けている。

Les Paul Official Web SiteLinkIcon

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1941

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1951

LP-MF2.jpg
1952



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first 8 track